イタリアファッションの起源と特徴は?
今注目のイタリアファッションですが、その起源はどこにあるのでしょうか?
これについては雑誌等ではそれほど解説されませんが、今回はちょっと踏み込んでイタリアファッションについて考えてみましょう。
イタリアファッションが生まれた背景
イタリアはヨーロッパでも南に位置し、200年も前にはまだまだ後進国と言われていました。そもそもこの時代には、イタリアという国さえ存在せず、様々な都市国家が分立している状態だったのです。そんな時代に、最も進んでいた国がイギリス。イギリスは時代を先導する世界のリーダーでした。
そんなイギリスでは、ファッションに関心の高い国王が相次いで就任したことにより、宮廷を中心に優れた服飾文化が生まれていました。この時代は産業革命で生地の生産量も爆発的に増え、ファッションが栄えたのは必然とも言えました。
もともと宮廷の文化であった服も、だんだんインテリ層へと広がっていきます。
しかし全てのスーツをイギリスで仕立てるわけにはいきません。ロンドンのテーラーは国王や宮廷と密接な関わりを持ち、その関係での仕事をしていたために、仕立て代は非常に高額だったのです。
そこで注目されたのが、南ヨーロッパの仕立てです。もともとフランスの影響を受けて独自の仕立て文化が生まれていたピエモンテ州で、イギリス式のスーツが作られるようになるまでに長い時間は掛かりませんでした。
さらにイタリアには多くのイギリスの貴族がバカンスや、発掘された古代ローマ遺跡の見学などを目的に訪れていました。彼らと現地のサルトリアによって、イタリアの仕立て文化は驚くほどの進化を遂げます。
独自進化していったイタリアファッション
イタリアは芸術の国です。すでに後進国となっていたとはいえ、かのルネッサンスの起こった土地であり、その前にはローマ帝国であった土地です。そこには非常に優れた感性を持つ職人も、数多く存在していました。
すると、冷涼な気候に合わせたイギリスの仕立てを、イタリア流にアレンジしようという動きが出てきます。それが、イタリア仕立ての始まりです。
さらにイタリアは先ほども紹介したように、数多くの都市国家が集まった集合体に過ぎませんでした。ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世によってイタリア統一が成された後でも、それぞれの都市の個性は失われて画一化されるどころか、より一層その特異性を際立てていたほどです。
すると今度は、イタリア仕立てというものも存在しなくなってしまいました。
北イタリアのミラノにはイギリスの仕立てに色濃く影響を受けたミラノ仕立てが生まれ、芸術の街フィレンツェにはフィレンツェらしいカーブとシンプルさにエレガンスを見いだすフィレンツェ仕立てが出来上がりました。
さらに特徴的なのはナポリ仕立てです。
アフリカにも似た暑い気候を持つ地中海都市でありながら、新古典主義の中心地となって高い文化度を誇ったナポリには、最高のエレガンスと、限りない軽快さという相反するものを融合させた、独特の仕立てが生まれたのです。
ナポリの服はより人間の動作にフォーカスしていたため、着心地の良さや動きやすさ、人が着たときの美しさなどが特徴となりました。
また南イタリアは北イタリアに比べ経済発展が遅れていたこともあり、贅沢にも全てを手縫いで行うという仕立て方法が一般的となりました。
各地方の代表的なサルトリアは以下の通りです。
イタリアの代表的な仕立て屋
ミラノ仕立て
Sartoria Campagna サルトリア・カンパーニャ
Domenico Caraceni ドメニコ・カラチェニ(上と同一)
Franco Prinzivalli フランコ・プリンツィバリー
フィレンツェ仕立て
Sartoria Seminara サルトリア・セミナーラ
Liverano & Liveranoリベラーノ・リベラーノ
Luigi P Cappelliルイジ・パオロ・カペッリ
ローマ仕立て
Brioni ブリオーニ
Gaetano Aloisio ガエターノ・アロイジオ
T&G Caraceni トミー&ジュリオ・カラチェニ
ナポリ仕立て
Rubinacci ルビナッチ(ロンドンハウス)
Antonio Panico アントニオ・パニコ
Sartoria Costantino サルトリア・コスタンティーノ
Gennaro Solito ジェンナーロ・ソリート
Sartoria Ciardiサルトリア・チャルディ
Sartoria Sabino サルトリア・サビーノ
Sartoria Dalcuore サルトリア・ダルクォーレ
シチリア仕立て
Sartoria Crimi サルトリア・クリーミ
他にもたくさんの魅力的なサルトリアがありますが、割愛させていただきます。
イタリアファッションの色彩と美的感覚
イタリアファッションを語る上でもう一つ欠かすことが出来ないのが、イタリアの色彩と美的感覚です。
私たち日本人がイタリアファッションに惹きつけられる大きなポイントが、彼らの色彩です。大胆に組み合わされる個性的なカラー、イタリアの生地だけが持つ美しい発色、そしてイタリア革製品の表情豊かな風合い。これらが絶妙にマッチして、イタリアにしかない独特のコーディネートが生まれています。
こういった色彩感覚は、イタリアならではです。イタリアファッションの元となったイギリスにも、もちろん独自の色彩感覚はあります。しかしイギリスでは色彩といえばネクタイやシャツで取り入れることが多く、スーツやジャケット自体に色彩を求めることは多くありません。
ちょうどロンドンのシックな色の街並みの中で、お店のショーウィンドウの中だけが色彩豊かにコーディネートされているように、ダークでクラシカルな色合いのスーツの中で、ネクタイとシャツだけが鮮やかに着こなされるのが、イギリス紳士の服装の常です。
しかしイタリアは色鮮やかです。イタリアを感じさせる澄んだ空や地中海の青。広葉樹林やオリーブのグリーン、ブラウン。モルタル造りの明るいベージュに、焼きレンガのオレンジや赤。海岸沿いの街並みのパステルカラー。このように、イタリアが実に様々な色に満ちあふれているからこそ、イタリアファッションは色鮮やかなのです。
イタリアのさんさんと降り注ぐ日光の元に好まれるスーツは、ネイビーやチャコールだけでなく、ベージュやライトグレー、休日であればアイボリーや水色などになるのです。
いかがでしょうか。
今回はイタリアファッションの起源や特徴について紹介しました。
イタリアの各都市に息づくサルトリア文化、そしてイタリアならではの色彩。言葉では語り得ない魅力を、ぜひ体感してみてください。